任天堂とSONYが同じゲームのCMを作ったら、どれだけ違いがあるのか?

マーケティング
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あなたは『ごく普通の鹿のゲーム DEEEER Simulator』をご存知ですか?

 

普通のシカのゲーム

 

2021年に発売されたこのゲームはNintendo Switch・プレイステーション4(以下、PS4)の両ハードに対応していて、任天堂とソニーがそれぞれ1分ほどのプロモーション動画を公開しています。
この2本の動画がマーケティング的にもなかなか面白いことになっているので、ぜひご紹介させて下さい。

 

まずは2本のCMをご覧下さい

この「ごく普通の鹿のゲーム」、15歳以上対象というだけあって、タイトルに反してかなりクセが強いです。
ですがくどくど説明するよりも、実際見てもらった方が早いでしょう。

ということで、任天堂・ソニーそれぞれのプロモーション動画がYouTubeで公開されていますので、以下に貼り付けます。
どちらでもお好きな方から見てみて下さい。

 

任天堂(Nintendo Switch)

 

ソニー(PS4)

 

いかがでしたか?
ゲームがゲームだけにどちらもインパクトがありますが、それでも同じゲームなのに結構印象が違ったと思います。

では、それぞれのCMの特徴を見ていきましょう。

 

任天堂のCMは「ゲーム性重視、楽しさを予感させる」

 

まずは任天堂のCMから解説を。
任天堂のCMでは「絵柄」や「世界観」を最初に見せ、その後に可愛く走るシカが「何の前触れもなく」「当然のように」首を伸ばすシーンで笑いをシカけてきます。
淡々と落ち着いたナレーションが、意地でも「これは普通のシカのゲームです」と言い張る点からも、このゲームが「真面目にふざけている」ことが伺えます。
その後はこのシカが「どんなシカなのか?」「何ができるのか?」に焦点を当てています。
プレイヤーが想像する「普通」とはあまりにかけ離れたシカのアクション性をふんだんに盛り込むことで、「このシカを操作してみたい!」と感じさせるCMに仕上がっています。

 

ソニーのCMは「ドラマ性重視、結末に期待させる」

 

対してソニーのCMは、まるで映画の予告のような作りになっています。
横断歩道ですれ違う一人の男性と、1頭のシカ。
「この後何が起こるのか?」というストーリー性を想像させたかと思うと、その後に「鹿になりたいすべての人類に捧ぐ」というふざけた字幕で笑いをシカけてきます。
任天堂のCMにはストーリー展開のような描写が全く無いのに対して、ソニーのCMは男性がシカを庇うシーン、時空の歪みのようなものにシカが飲み込まるシーンなどが盛り込まれており、
「このゲームは何が目的なのか?」「この普通ではないシカが最後にどうなるのか?」を想像させるCMに仕上がっています。

 

自社の顧客層に適したメッセージが「表現」を創る

こうしてみると、2つのプロモーション映像には結構表現に違いがありましたよね?
これはどちらが良いという話ではなく、それぞれの顧客層に刺さるように考慮された結果ということです。

 

Nintendo Switchの顧客層は?

 

Nintendo Switchの顧客層は年齢幅が広く、「ゲームが下手でも楽しめそう」「皆で楽しめそう」といったことを期待している、いわゆるライトユーザーが数多くいます。
任天堂自身もゲームを単なる「テレビゲーム」で済ませることなく、これまでマリオカートのハンドルやダンボール工作など「一つの体験」として楽しむことを提供しています。
これは私が勝手に感じていることですが、顧客が任天堂に求めているのは「ゲーム」というより「遊び」であると思っています。
そういった顧客層に対して、このCMは「色んなことができる個性的なシカで遊んでね!」というメッセージが込められているのではないでしょうか。

 

PSの顧客層は?

 

PSの顧客層はどちらかといえばゲーム慣れしてる層が多く、ゲームにストーリー性や達成感を求めてる方が多くいます。
ゲーム独自の世界観があり、ルールがあり、物語の始まりと終わりがあり、その中で喜怒哀楽の感情の変化を楽しむ傾向があります。
そのためPSのゲームにはキャラクターの心情や世界観を表現するための映像美や、シーンを盛り上げる音声・効果音の音質などが求められるため、ハードのスペックが追求されています。
そういった「感動」を求める顧客層に対して、「この個性的なシカの行く末を見届けて!」というメッセージが込められているように思います。

 

大事なのは「何を売るか」ではなく「誰に売るか」

 

同じゲームをプロモーションしているのに、顧客に合わせたメッセージを作るとこんなにも違いがあるのです。
これが「ゲームの内容を頑張ってPRしよう!」という発想になっていたら、2社でここまで差はできなかったのではないでしょうか。

 

あなたも何かをプロモーションしたり広告を出す際は、顧客に焦点を当てて「何をPRするか」ではなく「誰にPRするか」をぜひ意識して下さい。
顧客が「自分のこと分かってくれてる!」と感じた時、あなたのメッセージは必ず刺さります。

 

 

 

 

PS.

ちなみに私は任天堂のCMの方が刺さりました(笑)
あなたはどっちが好みでしたか?

 

●ごく普通の鹿のゲーム DEEEER Simulator

 

Nintendo Switch
https://store-jp.nintendo.com/list/software/70010000041513.html

 

PS4
https://www.playstation.com/ja-jp/games/deeeer-simulator/

 

STEAM
https://store.steampowered.com/app/1018800/_DEEEER_Simulator/?l=japanese

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